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黄金堂の仏像

黄金堂の内部は、実際の出羽三山参拝道に沿って仏像を安置しています。

羽黒山、聖観世音菩薩のお導きにより、月山、阿弥陀如来の浄土に至り、十三仏の年忌を過ぎ三十三年にわたる修行の後、湯殿山、大日如来の元で実社会での活力をいただく、出羽三山(羽黒山・月山・湯殿山)の御本尊さまの御膝元へ是非お参りください。

お堂に入って正面の黄金堂御本尊・三十三体聖観世音菩薩を拝した後、回廊を左に進むと、羽黒山石段参道入口の仁王門(現在の随神門)の金剛力士像の護衛のもと、五重塔の御本尊、羽黒山三所大権現を拝し、山頂へと向かいます。奥の一面は羽黒山寂光寺じゃっこうじ大金堂の空間です。中心に出羽三山大権現が鎮座し、両脇に三山御開山・能除聖者と、火災で焼失した本堂再建に尽力した覚諄別当。それに幸福と智慧を授けて下さる毘沙門天、大黒天、弁財天が左右を守る。また、天台大師と伝教大師、徳尼公とくにこうも寂光寺にお祀りされていたものです。その先の右側の一面は月山に至る道が示され、羽黒山頂より旧道を進み、荒澤寺の地蔵菩薩と不動明王から野口観音堂の御本尊千手観音、大満虚空蔵菩薩を拝し、月山の阿弥陀如来へ。境内に出て、そのまま於竹大日堂を拝することで湯殿山を拝せば、これで出羽三山がひとつの立体曼荼羅として完成します。

出羽三山の信仰は、飛鳥時代、開山・能除聖者の歩まれた道を、現代に生きる私たちも同じように歩かせていただくという、至って素朴な信仰です。しかし実際にその道を歩いてみると、登っているうちに身体から汗が吹き出し、荷物も重く感じられ、地獄のような苦しみを味わうでしょう。そして空腹や疲労感に襲われますが、月山の頂上につく頃には気持ちも一層晴れやかに、湯殿山へ下りる時には更に気持ちが引き締まります。そしてついに湯殿山の御宝前にお参りできたときの達成感と満足感はひとしおで、とても言葉で表し切れるものではありません。そして旅路からもどった時、何ともいえない疲労感や充実感とともに、明日からの元の生活をまた頑張る力を授かっていることに気づくでしょう。それは決して、死んで新たに「生まれ変わる」のではなく、死の底から再び「よみがえる」こと。今までの経験が活かされ、これからの人生をよりよく生きるため、出羽の三山それぞれからいただいた、「おしるし」です。

このように羽黒修験の修行と信仰は、実際の体験と経験に基いて、千年以上の昔から先人たちが積み重ねてきた、実生活をよりよく生きるための智慧の結晶です。黄金堂御参拝の皆様には是非、出羽三山の立体曼荼羅にて諸仏と御縁を結んでいただき、実際にお山を歩んでみられることをお勧めいたします。

案内図

1) 仁王像におうぞう

鶴岡市指定文化財 元禄8(1695)年、善慶作 羽黒山石段参道入口の仁王門(現随神門)にあったが、神仏分離後、黄金堂に移設。京都東山の清水寺きよみずでらの仁王像をモデルに模刻した尊像。

2) しん浄坊じょうぼうしょうそん上人像しょうにんぞう

鶴岡市指定文化財 延慶3(1310)年、弟子の道阿弥陀仏作。羽黒山奥之院荒澤寺中興の祖、紀伊国・那智山の行者。法力に優れ、祈祷するやたちどころに霊験ありと伝わる。

3) 大般若だいはんにゃ十六じゅうろくぜんじん

十六尊からなる、大般若経を守護する護法善神。般若経典を天竺からもたらした玄奘三蔵と、それを守護した深沙大将も合わせ祀る。開山の能除聖者のうじょしょうじゃ(蜂子皇子)が般若心経を大事にされた伝承から、当山では大般若十六善神もお祀りする。

4) 三宝荒神さんぼうこうじん

一般にはカマドの神として知られるが、人間の煩悩(貪・瞋・痴)を神とした存在。敬わなければ厳罰を受けるが、信心をもって礼拝すれば福の神となる。

5) 不動明王ふどうみょうおう

大日如来の教令輪身きょうりょうりんじん。慈悲の心をもって左手の羂索で仏法に従わない者を捕縛し、智慧の剣を右手に振るって煩悩や執著の心根を断ち切り、悟りの世界の入り口まで導いて下さる仏。

6) 羽黒三所大権現はぐろさんしょだいごんげん(国宝羽黒山五重塔御本尊) 

江戸初期の作。中央に聖観世音菩薩、左に妙見菩薩、右に軍荼利明王。軍荼利明王立像は廃仏毀釈の混乱に紛れ盗難。代替として阿弥陀如来立像を安置する。

7) 愛染明王あいぜんみょうおう

愛欲や性愛といった煩悩を、清浄な悟りの境地へ導く。

8) 稲荷大明神いなりだいみょうじん

荼枳尼天。五穀豊穣・殖産興業の守り神。

9) 宇賀神うがじん

日本神話に登場する宇迦之うかの御魂みたまのかみと同体で、穀霊神、福徳神として信仰される。

10) 毘沙門天びしゃもんてん

仏教における天部の仏神。四天王の一尊で北方を守護する、財運・勝負事・出世の守り神。

11) 宇賀うが弁財天べんざいてん

江戸時代初期の作。羽黒山上の弁天堂(現 厳島神社)御本尊。本殿は明治4年に再建され、遷宮法要が厳修されたが、間もなく神仏分離となり、石段参道を背負われて羽黒山を下り、黄金堂に安置された。財運・芸能・智慧の守り神。

12) 大黒天だいこくてん

日本の大黒天信仰は、伝教大師最澄によって唐よりもたらされた。最澄は、大黒天に毘沙門天と弁財天のお顔と持物が一身に具わった「三面大黒天」を感得し祀った。財運・商売繁盛の守り神。

13) 開山照見大菩薩かいざんしょうけんだいぼさつ

崇峻天皇すしゅんてんのうの第三皇子で名を「蜂子皇子はちこのおうじ」という。父を暗殺され、自身の身にも危険が迫ったことから都を逃れ、出羽三山を開山した。山獄修行に優れ、般若心経で人々の苦を除かれたことから「能除聖者のうじょしょうじゃ」とよばれた。江戸後期、朝廷から「照見大菩薩しょうけんだいぼさつ」の諡号しごうを賜った。

14) 羽黒山大権現はぐろさんだいごんげん

羽黒山の神様。開山能除聖者の前に聖観世音菩薩として本来の姿(本地ほんじ)そのままで現れた。日本神話の伊氐波神いではのかみ稲倉御魂命うかのみたまのみこと

15) 湯殿山大権現ゆどのさんだいごんげん

湯殿山の神様。開山能除聖者の前に大日如来として本来の姿(本地)そのままで現れた。日本神話の大山祇命おおやまつみのみこと大己貴命おおなむちのみこと少彦名命すくなひこなのみこと

16) 月山大権現がっさんだいごんげん

月山の神様。開山能除聖者の前に阿弥陀如来として本来の姿(本地)そのままで現れた。日本神話上では月読命つくよみのみこと

17) 羽黒山第七十五代執行別当しゅぎょうべっとう 覚諄僧正かくじゅんそうじょう

僧正は越前国(福井県)に生まれ、文化10(1813)年、日光山医王院より羽黒山に赴任。二度にわたる火災で焼失した大金堂を10年の歳月を費やし再建したのが現在の三神合祭殿である。

18) 土肥どひ次郎じろう実平さねひら

鶴岡市指定文化財。土肥実平は平安時代末期から鎌倉時代初期、相模国土肥郷(現・神奈川県湯河原町)を拠点として源頼朝の挙兵・平氏追討を支えた武将。正史に記載がないものの、奉行職として建久4年(1193)の羽黒山黄金堂建立にも携わったとされ、永禄12(1569)年、後裔を名乗る、照平なる人物が本像を奉納したと伝わる。

19) 天台大師てんだいだいし

中国天台宗の高祖。法華経の教えを根本として天台三大部(法華玄義・法華文句・摩訶止観)などを講述した。

20) 伝教大師でんぎょうだいし

日本天台宗の宗祖。天台大師の教えを受け継ぎつつ、円密禅戒の四宗融合・大乗戒壇の建立を目指した。

21) 徳尼公とくにこう

鶴岡市指定文化財。藤原秀衡の娘で名を「徳子」といい、源頼朝により奥州藤原氏が滅ぼされた後、36人の侍臣と共に平泉から羽黒山に落ち延びたが、頼朝勢攻勢のため、立谷沢から野口の観音堂に日参。彼女が通った道を「念仏坂」という。後に宮之浦に移り、酒田開発の基を築いた。このお像は明治以前までは寂光寺大金堂(現在の三神合祭殿)でお祀りされていた。

22) 荒澤延命地蔵大菩薩あらさわえんめいじぞうだいぼさつ

湯殿山大日如来の、柔和な菩薩としての姿で、大地のように広大無辺の慈悲で六道輪廻に迷う衆生を救う菩薩。能除聖者は荒澤開創の際、延命地蔵大菩薩を感得。尊像を納める厨子と地蔵菩薩立像は荒澤寺地蔵堂にあったもの。

23) 荒澤大聖不動明王あらさわだいしょうふどうみょうおう水板不動明王みずいたふどうみょうおう臂切不動明王ひじきりふどうみょうおう

湯殿山大日如来の荒々しい明王としてのお姿。能除聖者が荒澤開創の際、延命地蔵大菩薩とともに感得。右手の剣で左臂を斬る、特異な姿をとる。また、弘法大師空海が月山登拝に際し荒澤の影見川で水垢離をした時、水中に不動明王のお姿が現れ、驚き手に取って感得した姿も「水板不動尊」として伝わる。

24) 荒澤野口観音堂あらさわのぐちかんのんどう 千手千眼観世音菩薩せんじゅせんげんかんぜおんぼさつ

千の手、千の眼で生きとし生けるものを救う。野口観音堂は旧荘内三十三観音霊場の二番札所。

25) 叶宮庚申かのみやこうしん 青面金剛童子しょうめんこんごうどうじ

三猿(見ざる・聞かざる・言わざる)を従え、身を慎み他人の悪さを見ず、聞かず、言わずと教え導く神。

26) 大満虚空蔵菩薩だいまんこくうぞうぼさつ

広大な空のように無限の智慧ちえと財宝を与える菩薩。

27) 勢至菩薩せいしぼさつ

観世音菩薩と共に阿弥陀如来のわき脇侍わきじを務める。観世音菩薩の慈悲に対して、勢至菩薩は智慧ちえをつかさどる。阿弥陀三尊像としての造像がほとんどで、勢至菩薩単独での作例は数少ない。智慧の光であまねく一切を照らし、三悪道(地獄・餓鬼・畜生)に苦しむ、生きとし生けるものを救う。

28) 阿弥陀如来あみだにょらい

限りない寿命と光明をもって人々を救い続ける、西方極楽浄土の教主であり、月山から人々を極楽へ導く慈悲の仏。

於竹大日堂について